まず結論から
ベトナムドンでIOSTを買える、認可を受けたベトナムの取引所はありません。私たちが確認した時点で、認可済みの取引所が一つも確認できなかったからです。ベトナムは初めての本格的な暗号資産法を成立させ、認可取引所のための5年間のパイロット制度を立ち上げ、2026年9月1日からは財務省の認可を受けていないプラットフォームで取引した居住者に罰金を科せるようになりました。ベトナムでIOSTを持っている人の多くは、Binance P2Pでドンを使って暗号資産を買い、それを海外の取引所でIOSTに交換しています。このルートは今も存在しますが、実際の罰金をともなう法的なグレーゾーンの中にあります。
このページでは、混同されがちな3つのこと、つまり法律が何を定めているか、規制当局が何をしているか、利用者が実際に何をしているかを分けて説明します。ルールはわかりやすく解説しますが、ルールを破ることをすすめるつもりはありません。日本からベトナムに赴任している方や、ベトナムのIOST事情に関心がある方にも役立つよう、背景から順にまとめました。IOSTそのものが初めての方は、先にIOSTとはを読んでから戻ってきてください。
法律の中身
ベトナムには長いあいだ、暗号資産という法的なカテゴリー自体がありませんでした。それを変えたのが、2025年6月14日に国会で可決され、2026年1月1日に施行された「デジタル技術産業法(法律71/2025/QH15)」です。この法律はデジタル資産を初めて定義し、仮想資産と暗号資産に分けました。暗号資産は2015年民法上の財産として扱われます。第48条は、暗号資産サービスを提供する企業の事業条件を定めています。
法律が示すのは大枠で、細部は政府が決めました。2025年9月9日付の決議05/2025/NQ-CPにより、5年間のパイロット暗号資産市場が始まりました。財務省が事業者を認可し、国家証券委員会が監督し、ベトナム国家銀行と公安省も関与します。ハードルは意図的にかなり高く設定されています。パイロット取引所には最低10兆ドン、約3億8,000万米ドルの資本金が必要で、株主の65%以上は機関投資家でなければならず、外国資本の比率は49%まで、参加できる事業者は最大5社です。募集も取引もすべてドン建てで行い、法定通貨や証券を裏付けにしたトークンの発行は禁止されています。
申請の受付は、財務省決定96/QĐ-BTCにもとづき2026年1月20日に始まりました。報道によれば、2026年3月には5社が初期審査を通過しています。TCEX(Techcombank)、CAEX(VPBank。OKX VenturesとHashKeyが出資)、SCEX(旧LPEX、LPBank系)、VIXEX(VIX証券)、Vietnam Digital Assets(Sun Group)です。2026年9月には国家証券委員会のトップが、最初のライセンスは年内に出る見込みだと述べました。ただし、2026年10月末までに実際に発行されたライセンスは見つかりませんでした。パイロット取引所がどの銘柄を扱うかも明らかにされていないため、IOSTがそこに含まれるという兆しはまだありません。
- 2014年・2017年国家銀行の声明暗号資産は合法的な支払い手段ではない
- 2025年6月14日法律71/2025/QH15が可決デジタル資産と暗号資産を定義
- 2025年9月9日決議05/2025/NQ-CP5年間の認可パイロットが始動
- 2026年1月1日法律71が施行暗号資産を財産として扱う
- 2026年1月20日申請の受付開始財務省決定96/QĐ-BTC
- 2026年3月27日通達32/2026/TT-BTC送金に0.1%の税
- 2026年9月1日政令284/2026が施行無認可での取引に罰金
どの機関が何を担当している?
関係する公的機関は4つあり、それぞれ役割が違います。政府が決議や政令を出し、財務省がパイロット事業者の認可と税のルールづくりを担い、国家証券委員会が市場を監督し、中央銀行が決済を取り締まります。原文を読みたい方は、法令データベースのThư Viện Pháp Luậtにベトナム語の全文が掲載されています。
政令284と罰金
ふつうの利用者にとって状況を大きく変えたのが、政令284/2026です。2026年9月1日に施行され、暗号資産に関する違反に最大2億ドンの行政罰金を定めています。暗号資産サービスを提供したり宣伝したりする無認可のプラットフォームには1億8,000万〜2億ドン、財務省の認可を受けていないプラットフォームを通じて取引した国内投資家には3,000万〜5,000万ドンです。暗号資産を保有しているだけなら罰金の対象にはなりません。
悩ましいのはここからです。この政令は、認可済みのプラットフォームが存在しないように見える時期に、無認可のプラットフォームでの取引を罰しています。つまり実際には、BinanceやOKXから小規模な海外の取引所まで、ベトナムの利用者が使えるすべての取引所が、ベトナムの基準では無認可ということになります。2026年半ばまでの報道では、こうした取引所の個人利用者に対する取り締まりは伝えられておらず、私たちの調査でも見つかりませんでした。とはいえ、事例が報じられていないことは安全の保証にはなりません。ルールはすでに存在し、当局はいつでも適用を始められます。
ベトナムに住む日本人など外国人に、この「国内投資家」の規定がどう適用されるのかは確認できませんでした。現地に住んでいる方は、ご自身の立場について現地の専門家に確認することをおすすめします。
決済の禁止と0.1%の税
ベトナム国家銀行は2014年と2017年に、ビットコインなどの暗号資産は合法的な支払い手段ではないと表明しています。暗号資産の発行・提供・支払いへの利用は、政令80/2016で改正された政令101/2012によって禁止され、政令88/2019による行政罰金や、刑法第206条による刑事責任の可能性もあります。現在適用される罰金の正確な金額は確認できなかったため、ここでは記載しません。実務上の意味はシンプルで、IOSTを資産として持つことはできても、ベトナムのカフェや大家さん、ネットショップへの支払いに合法的に使うことはできません。
税金は、2026年3月27日に施行された通達32/2026/TT-BTCで導入されました。個人は、認可業者を通じた送金ごとに、その取引が利益だったか損失だったかにかかわらず、取引額の0.1%を個人所得税として支払います。法人は暗号資産の所得に20%の法人所得税がかかり、暗号資産の譲渡はVATの対象外です。わかりやすい例を挙げると、認可を受けた取引先で2,000万ドン相当のIOSTを売れば、税額は2万ドンです。日本の雑所得のように利益に対して課税するのではなく、取引額そのものに薄く課税する仕組みだという点が大きな違いです。ただし、この通達は認可業者を前提に書かれているため、海外の取引所での取引にどう適用されるかははっきりしません。私たちは税理士ではないので、ベトナムの専門家に自分の状況を確認し、すべての取引の記録を残してください。
IOSTを手に入れるルート
私たちが調べた限り、IOSTのドン建てペアはどこにもなく、Binance P2PでもIOSTは扱われていません。そのため、利用者が語るルートは2段階になります。まずP2P市場で、ほかの個人から銀行振込でドンを払って暗号資産を買います。次に、その暗号資産を海外取引所の板でIOSTに交換します。中心になっている入口はBinance P2Pで、「Bank Transfer (Vietnam)」などの支払い方法を指定したステーブルコインの広告が数百件並んでいます。VietQRやNapas 247、ときにはMoMoやZaloPayを挙げる利用者もいますが、IOSTの購入者について確認はできませんでした。
このルートを紹介するのは、市場の仕組みを理解してもらうためで、推奨するためではありません。政令284のもとでは、どちらの段階もベトナムのライセンスを持たないプラットフォームを経由します。国を問わない一般的な手順はIOSTの買い方にまとめています。
ルールと自分のリスクを確認する
上の政令284の章を読みましょう。無認可のプラットフォームでは取引しないと決めたなら、以下の手順は必要ありません。
P2P市場でドンを使って暗号資産を買う
取引実績が長く評価のきれいな相手を選び、支払いは必ず本人名義の口座からの銀行振込で行い、双方の着金を確認するまでは決して解放や確認ボタンを押さないでください。
暗号資産をIOSTに交換する
海外取引所のIOST現物ペアを使います。どの取引所がどのネットワークで扱っているかはIOSTを買える取引所比較で確認できます。
IOSTを自分のウォレットへ移す
取引所でIOSTの出金が再開されていることを確認してから、IOSTウォレットのガイドなどを参考に、自分で管理できるウォレットへ出金します。
コストを具体的に計算してみましょう。P2Pの価格が1 USDT=2万6,000ドンだとすると、260万ドンで100 USDTが手に入ります。現物取引の手数料が0.1%なら、受け取るIOSTは99.9 USDT分です。そのあとIOSTのL1ネットワークで出金すると、IOST建ての少額の定額手数料がかかります。これらの数字は説明のための例で、P2Pの価格は一日中変わり、売り手によっても違います。いま特定の枚数のIOSTがドンでいくらになるかは、下の換算ツールか、日本円にも対応したIOST円換算ツールで確認できます。
P2Pではなくカードで買いたいなら
2013年から運営されているCEX.IOでは、米ドル・ユーロ・英ポンド建てでBNBなどの暗号資産をカードで買えます。ただしIOSTは上場しておらず、ベトナム向けの法人はベトナムのライセンスを持っていません。
ベトナムでは認可制の暗号資産取引所が試行中で、2026年9月1日施行の政令284/2026により、無認可の取引所で売買した居住者には罰金が科されます。CEX.IOはベトナムのライセンスを持っていないため、登録前に規則を確認してください。
取引先とその位置づけ
IOSTは多くの海外取引所に上場していて、そのほとんどがIOST/USDTの1ペアだけです。ベトナムのライセンスを持つところは一つもありません。BinanceのIOST/USDTは世界でもっとも厚い板で、手数料やネットワークの詳細はBinanceのレビューで紹介しています。ひとつ、つまずきやすい点があります。Bybitはベトナムで人気ですが、IOSTの現物市場はまったくありません。あるのはIOSTUSDTの無期限先物だけで、これはレバレッジをかけたデリバティブであり、コインを保有する手段ではありません。
| 取引先 | IOSTの市場 | ドンでの入口 | ベトナムでの位置づけ |
|---|---|---|---|
| Binance | IOST/USDTの現物 | P2P(銀行振込) | ライセンスなし |
| OKX | IOST/USDT、USDC、EUR | P2P | ライセンスなし |
| Gate、MEXC、KuCoin、Bitget、HTX | IOST/USDTの現物 | ドンの直接入金なし | ライセンスなし |
| Bybit | 無期限先物のみ、現物なし | P2P | ライセンスなし |
| Remitano | 未確認 | 未確認 | 状況は未確認 |
| ONUS/VNDC | おすすめしない | — | 2026年3月に逮捕者の報道 |
出典:CoinGeckoのIOSTティッカーと各取引所のAPI、ONUSについてはベトナムの報道。財務省のライセンスを持つ取引先はありません。
Remitanoについては少し補足が必要です。多くのベトナムの利用者にとって、国産のP2Pサービスとして記憶に残っている名前だからです。私たちは現在のサービス状況を確認しようとしましたが、サイトにブロックされたため、今もベトナムの利用者向けにサービスを続けているのか、何を提供しているのかはわかりません。ONUSとVNDCトークンはもっとはっきりしています。2026年3月にベトナムのメディアが関係者の逮捕を報じており、私たちならどちらも使いません。自国通貨の認可市場を持つ近隣国と比べたい方は、BitkubがIOST/THBの板を運営するタイのIOST事情や、インドネシアのIOST事情もご覧ください。
2つの段階に、2種類のリスク
P2Pの段階には取引相手と銀行のリスクがあり、取引所の段階にはプラットフォームと出金のリスクがあります。そして政令284のもとでは、どちらにも法的なリスクが加わります。
出金・メモ・ネットワーク
IOSTはいま複数の形で存在していて、違う形を選んでしまうのがコインを失うもっとも多いパターンです。元祖のL1チェーン上のネイティブIOSTはアカウント名あてに送り、取引所に入金するときはメモが必要です。IOST 3.0で登場した取引用のトークンはBNBチェーン上のBEP-20トークンとしても存在し、0xアドレスあてに送り、メモは不要です。私たちが最後に確認した時点で、BinanceではL1ネットワークでの出金手数料が1 IOST(メモ必須)、BEP-20では29 IOSTでした。手数料は変わるので、毎回出金画面で確認してください。
出金が止まることもあります。2026年10月のgo-iost v4.0.0の必須アップグレードのあと、各取引所はIOSTの入出金を数日間停止し、Binanceはさらに長く出金を止めていました。必ず少額のテスト送金から始めましょう。メモ、テスト送金、入金が届かないときの対処法はIOSTの送金方法で説明しています。
ベトナム特有のリスク
最初に来るのは法的なリスクで、これは上で説明したとおりです。それ以外のリスクは、ほとんどが実務的なものです。P2P取引では見知らぬ相手と直接やりとりすることになり、詐欺にはおなじみのパターンがあります。偽の振込画面のスクリーンショット、振込を取り消す買い手、盗まれた口座からのお金が自分の口座に入金されて口座が凍結されるケースなどです。2025年9月1日からベトナムの銀行口座には生体認証が必要になり、多くのP2P詐欺の裏にある「名義貸し口座」は使いにくくなりましたが、なくなったわけではありません。
買う前にトークンのコントラクトを確認!そしてコインそのもののリスクもあります。IOSTは2018年の最高値を大きく下回る水準で取引されていて、Binanceと韓国以外の板は薄く、BNBチェーン上には偽の「IOST」トークンも出回っています。チャットグループでは偽のエアドロップや「必ず勝てる」シグナルも宣伝されています。偽トークンや上場廃止のリスクはIOSTは危ない?で、値動きの激しさはリアルタイムのIOSTの価格・チャートで確認できます。グループの管理人から送られてきたコントラクトアドレスを理由にトークンを買うのは、絶対にやめましょう。
今後の注目点
ベトナムの新しい制度の中でIOSTがどう位置づけられるかは、3つのことで決まります。1つめは、財務省が実際にパイロットのライセンスを発行するのか、そして誰に出すのか。2つめは、それらの取引所がどの資産の上場を認められるのか。パイロット制度はすべてをドン建てにし、法定通貨を裏付けにしたトークンを禁止しているからです。3つめは、合法的な選択肢ができたあと、当局が政令284をどこまで厳しく運用するかです。認可された取引先がひとたび開業すれば、「合法的に取引できる場所がない」という言い分は通らなくなります。これらの事実に変化があれば、このページを更新します。地域のほかの市場についてはアジアのIOST市場マップをご覧ください。
よくある質問
ベトナムでIOSTを買うのは合法?
暗号資産を保有するだけなら罰金の対象ではなく、法律71/2025/QH15で暗号資産は財産として認められました。一方、取引は別の話です。政令284/2026により、2026年9月1日から財務省の認可を受けていないプラットフォームで取引した国内投資家には3,000万〜5,000万ドンの罰金が科されます。私たちの調査では認可済みのプラットフォームは確認できず、どのルートにも法的なリスクがあります。
ベトナムドンでIOSTを直接買える?
私たちが調べた限り、IOST/VNDのペアを提供している取引先はなく、Binance P2PでもIOSTは扱われていません。IOSTを買う人は、P2P市場で銀行振込を使ってドンで暗号資産を買い、海外取引所でIOSTに交換するのが一般的です。
ベトナムでBinanceを使うのは合法?
Binanceはベトナムのライセンスを持っていません。決議05/2025/NQ-CPにもとづくパイロット制度は、資本金10兆ドン以上でベトナム資本が過半を占める企業にしか開かれていないため、現在の枠組みではBinance.comがパイロット取引所になることはできません。ベトナムから利用すれば、無認可のプラットフォームに関する政令284のルールの対象になります。
ベトナムで暗号資産に税金はかかる?
2026年3月27日に施行された通達32/2026/TT-BTCにより、認可業者を通じた暗号資産の送金ごとに、利益か損失かにかかわらず取引額の0.1%の個人所得税がかかります。法人は20%の法人所得税で、暗号資産の譲渡にVATはかかりません。海外のプラットフォームでの取引にどう適用されるかは不明なので、ベトナムの税務専門家に相談してください。
ベトナムでIOSTを支払いに使える?
使えません。ベトナム国家銀行は、ビットコインを含むどの暗号資産も合法的な支払い手段として認めておらず、暗号資産の発行・提供・支払いへの利用は禁止されています。悪質な場合は刑法の対象になることもあります。
Remitanoはまだベトナムで使える?
確認できませんでした。Remitanoはベトナム人が創業した老舗のP2Pサービスですが、サイトが私たちの確認をブロックしたため、現在の状況についての情報は慎重に扱い、自分で確かめてください。
出典・参考資料
- VCCI:ベトナムのデジタル資産の法的枠組み(法律71/2025/QH15) · 商工会議所による要約
- Vietnam Briefing:暗号資産取引所のライセンス制度(決議05/2025) · 法律の要約
- Tuoi Tre:暗号資産の違反に最大2億ドンの罰金(政令284/2026) · 報道、2026年7月17日
- Viet Nam News:暗号資産の送金に0.1%の税(通達32/2026/TT-BTC) · 報道
- ベトナム法律家協会:仮想通貨を支払い手段に使うのは違法 · 法律解説
- CoinGecko:全取引所のIOSTティッカー · マーケットデータAPI
- Bybit:IOSTUSDTの現物銘柄照会 · 取引所のAPI
