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1分でわかるIOST 3.0
IOST 3.0は、IOST財団が2024年末から2025年3月にかけて推し進めた再出発の計画です。中身は大きく3つあります。1つ目は新しいLayer 2ネットワークの立ち上げで、BNBスマートチェーンに決済を委ね、ガス代をBNBで払うOP Stackのロールアップです。2つ目はIOSTトークンの重心をBNBチェーンへ移したことで、一部の大手取引所を除けば、いまやBEP-20版が取引の大半を担っています。3つ目は約213.2億枚の新しいIOSTの発行で、ジェネシス時に存在したトークン数をおよそ2倍にしました。
「何をしなかったか」も同じくらい大切です。IOSTの技術ページで紹介している、読みやすいアカウント名とJavaScriptのスマートコントラクトを持つ元のIOSTチェーンは、止められていません。今も0.5秒ごとにブロックを生成し、2026年10月には必須のノードアップグレードgo-iost v4.0.0も行われました。保有者が何かを交換するよう求められたこともありません。スナップショット時点で1,000 IOST以上を持っていた人には、手持ちのコインに加えてIOST 3.0のエアドロップが配られています。
正直にまとめると、IOST 3.0はこれまでのところ、主にトークンと立ち位置の変更です。宣伝では現実資産(RWA)、PayFi、分散型IDが語られていますが、そのすべてを担うはずのLayer 2は、稼働はしているものの、私たちが調べた限り実質的に空っぽでした。IOSTが初めての方は、先にIOSTとはを読んでから、3.0の詳細を知りにここへ戻ってきてください。
投票からローンチまで:ガバナンスの流れ
始まりは2024年10月21日、財団がIOSTをPayFiとDePINのネットワークに変える提案を出したことでした。投票は公式エクスプローラーのIOSTSCANで行われ、2024年11月24日に締め切られました。12月5日には決済とIDを組み合わせた「PayPIN」というアイデアを軸にしたマニフェストが公開され、2024年12月12日に正式発表が行われます。IOSTはWeb3決済のための「BNBチェーンの特化型Layer 2」になる、という内容です。この投稿は今も、当初の計画をいちばんはっきり示した資料です。
見落としがちな細かい点があります。Layer 2のジェネシスブロックのタイムスタンプは2024年11月11日で、最初の投票が締め切られる前の日付なのです。チームがインフラを早めに立ち上げるのはよくあることなので、これだけで何か不適切だったと言えるわけではありません。ただ、保有者がまだ投票している間に、技術的な決定はすでにかなり進んでいたことがわかります。
報道によると、新規発行を含むLayer 2移行についての2回目のガバナンス投票は、2025年1月12日に可決されました。韓国の反応はその翌日です。2025年1月13日、Upbitは取引所連合DAXAとともに、供給量の変更を理由にIOSTについて投資家向けの注意喚起を出しました。BithumbとCoinoneも同様の告知を出しています。ここは正しく読む必要があります。注意喚起は韓国の手続きの中でいちばん軽い段階で、IOSTは「投資注意銘柄(警告)」に指定されておらず、上場廃止にもなっていません。この制度の仕組みはUpbitのレビューと韓国のIOST事情で説明しています。
IOST 3.0は2025年3月8日に正式ローンチし、新しいWebサイト、新しいドキュメント、エアドロップのルールが公開され、BEP-20トークンがデプロイされました。エアドロップのスナップショットは2025年3月15日9時(日本時間)です。その後、プロジェクトは2025年6月にDWF Labs、Presto、Rollman Management Groupが主導する2,100万ドルの戦略的資金調達を行い、2025年11月にID用のリング型デバイス「Signet」のアプリを公開し、2026年9月8日には旧ERC-20発行分から7,000万IOSTをバーンしました。
Layer 2の正体:BNBスマートチェーン上のOP Stackロールアップ
技術的に見ると、IOST Layer 2はOP Stackの「Bedrock」コードベースで作られたオプティミスティック・ロールアップで、opIOSTというブランド名が付いています。コードはBNBチェーン自身のLayer 2であるopBNBのフォークで、opiostリポジトリのREADMEはopBNBのものをほぼそのまま写しています。ノードのドキュメントはAltLayerがホストするブートノードを指しており、一からの自社開発ではなく、ロールアップ・アズ・ア・サービスの事業者を使って運営されていると考えられます。それ自体は問題ではありません。新しいLayer 2の多くは実績のあるコードを再利用しています。ただ、このLayer 2がIOST元来のProof of Believabilityの設計とは無関係だということは押さえておきましょう。
ウォレット上でのネットワーク名は「IOST Mainnet」、チェーンIDは182で、ガス代はIOSTではなくBNBで払います。ここが保有者にとっていちばん紛らわしい点で、IOSTを持っていてもLayer 2の手数料は払えません。手数料自体はごくわずかです。ドキュメントは1回の送金あたり0.001ドル未満を目標としており、私たちが読み取ったガス価格も1 gweiに満たない水準でした。オプティミスティック・ロールアップなので、BNBスマートチェーンへの出金にはほかのOP Stackチェーンと同じく7日間の確定期間があります。
ブロック生成間隔は、ネットワークの歴史の中で変わってきました。ジェネシス時はおよそ2秒に1ブロックでしたが、2026年10月に計測したときには0.25秒に1ブロックでした。ドキュメントは今も2秒、リポジトリは1秒と書いているので、プロジェクト資料の数字はどれも慎重に扱ってください。もっとも、問題は速さではありません。ネットワークの全期間から数千ブロックを抜き出して調べたところ、ユーザーによる取引はひとつも見つからず、あったのはOP Stackの各ブロックに自動で入るシステム取引だけでした。シーケンサーの手数料ボールトが稼働以来ためた額は、累計でBNBの4分の1ほどです。
ウォレットを接続するには、下のボックスにある値でカスタムネットワークを追加します。MetaMaskで使え、公式ドキュメントもMetaMaskを推奨しています。Layer 2のエクスプローラーl2-scan.iost.ioは通常のブラウザでは見られますが、自動化されたアクセスはブロックされます。どのウォレットがどのIOSTに対応しているかはIOSTウォレットのガイドで整理しています。
3種類のIOST:L1コイン、BEP-20、旧ERC-20
2025年以降、IOSTにまつわるミスの多くは種類の取り違えから生まれています。目にする可能性があるのは次の3つで、それぞれ別のネットワークにあります。
L1ネイティブコインは元のIOSTチェーン上にあります。小数点以下は8桁、トークンIDは単にiostで、送金先は0xアドレスではなくbinanceのようなアカウント名です。このネットワークで取引所へ入金するにはメモが必要です。L1の発行上限は900億枚、現在の供給量は約326億枚で、旧ドキュメントにある年2%のインフレだけでは説明がつかない多さです。そのずれはIOSTの発行枚数・供給量のページで検証しています。
BEP-20トークンはBNBスマートチェーンの0xAf48B7e315a52518CfBF7d96C455D9dFAD94cB48にあります。小数点以下は18桁、2025年3月8日にデプロイされ、213.2億枚の新規発行分に、ブリッジでL1から移ってきた分を加えたIOSTを保持しています。2026年10月時点のオンチェーンの総供給量は約223.7億枚でした。ドキュメントはこれをBNBチェーン上で唯一の公式IOSTトークンコントラクトとしています。3.0という名前とは裏腹に、Layer 2上のトークンではない点に注意してください。
旧ERC-20トークンはイーサリアムの0xFA1a856Cfa3409CFa145Fa4e20Eb270dF3EB21abにあり、2018年にIOSTが始まった場所です。2019年2月のメインネット稼働後、保有者はネイティブコインへ交換しました。コントラクト上の供給量は今も210億枚と表示され、2026年9月にバーンされた7,000万IOSTはこの旧発行分からのものです。一部のトークンリストやハードウェアウォレットにはまだ表示されますが、取引所で売買されているのはこのバージョンではありません。
IOST 3.0のネットワークとコントラクト
- L2のネットワーク名
- IOST Mainnet
- L2のチェーンID
- 182
- L2のRPC
- https://l2-mainnet.iost.io
- L2のガス用トークン
- BNB(小数点以下18桁)
- L2のエクスプローラー
- https://l2-scan.iost.io
- BEP-20版IOST(BNBスマートチェーン)
- 0xAf48B7e315a52518CfBF7d96C455D9dFAD94cB48
- 旧ERC-20版IOST(イーサリアム)
- 0xFA1a856Cfa3409CFa145Fa4e20Eb270dF3EB21ab
- L1ネイティブIOST
- トークン iost · 発行者 issue.iost · 小数点以下8桁
ブリッジ:何がどこへ動くのか
公式のブリッジは2つあり、役割はまったく違います。この2つを理解すれば、「私のIOSTはどこへ行った?」という疑問の大半は解決します。
iBridge(iostbridge.com)は、L1のIOSTをBNBスマートチェーン上のBEP-20版IOSTに変換するブリッジで、一方通行です。1回の送金は最低1万IOST、最大100万IOSTで、50万IOSTを超えると完了まで10分から10時間かかることがあります。私たちが確認したとき、ページにはBSCからIOSTへの方向は「近日対応予定」と書かれていました。つまり、一度ブリッジすると公式ツールでは戻せません。気が変わったら、取引所でBEP-20版を売ってL1のIOSTを買い直すしかないということです。
L2ブリッジ(l2-bridge.iost.io)は、BNBスマートチェーンとIOST Layer 2を双方向につなぎ、所要時間は2〜10分ほどです。対応しているのはBNBだけで、IOSTとUSDTは近日対応予定とドキュメントにあります。全体の流れは次のとおりで、最後の区間で運ばれるのはIOSTではなくBNBです。
IOST 3.0で価値が移動する流れ
具体例で考えてみましょう。iWallet Proのアカウントに5万IOSTを持っていて、BNBチェーンで行われているStakeDropに参加したいとします。この場合、iBridgeで5万IOSTを自分の0xアドレスへブリッジし、そのアドレスにガス用のBNBを少し置いてから、BEP-20版をステークします。Layer 2には一度も触れません。一方、手持ちが5,000 IOSTならiBridgeの最低額に届かないので、両方のネットワークに対応した取引所を使う必要があります。どんな送金でも、先にIOSTの送金方法を読んでおいてください。L1ネットワークにしか対応していない取引所のアドレスへBEP-20版を送ると、永久に失われる可能性があるからです。
ガス用のBNBや、最初の暗号資産が必要なら
日本にお住まいの方は、金融庁登録の取引所でIOSTを直接買うのが基本です。海外在住で手元にBNBなどの暗号資産がない場合、2013年から運営されているCEX.IOでカードを使って購入できます。CEX.IOはIOSTを扱っておらず日本居住者も利用できないため、ルートは「暗号資産(BNBなど) → IOSTを扱う取引所 → 自分のウォレット」になります。
日本にお住まいの方はCEX.IOを利用できません。国内でIOSTを買う場合は、金融庁に登録された暗号資産交換業者をご利用ください。
RWA、PayFi、PayPIN、DID:主張と観測できる利用実態
IOST 3.0をめぐるストーリーは、何度も変わってきました。2024年末の売り文句は、IDを組み込んだ決済ネットワークであるPayFiとPayPINでした。2025年から2026年にかけて、公式サイトの看板は現実資産へと移り、「Designed for Tokenization, Built for Anything」というキャッチコピーと、「初のマルチチェーンRWAインフラ」という主張が掲げられます。あわせてWealthFi、Liquidity Engine、Nexus DAO、そして心拍を分散型IDとして使うハードウェア「Signetリング」が登場しました。SignetについてはNFT・ゲームのページで取り上げています。
その一部は実際の取り組みです。財団はRWAインフラ、OP Stackのフォーク、新しいTypeScriptのSDK「ivem」のリポジトリをGitHubで公開しています。CEOはインタビューで、RWAのパートナーとしてDigiFTとSecuritizeの名前を挙げました。しかし、オンチェーンで測れる足跡はゼロに近く、2024年の提案に掲げられた看板の目標のいくつかは、達成を示す公開情報がないまま期限を過ぎています。約束された内容と、誰でも確かめられる内容を表で比べてみます。
| 主張 | 出どころ | 確認できたこと |
|---|---|---|
| 2025年末までにIOST上のRWAを10億ドル超に | 2024年の提案 | トークン化資産の公開台帳なし。サンプリングでL2のユーザー取引ゼロ |
| 2025年第4四半期までに月間取引高2億ドル | 2024年の提案 | L2シーケンサー手数料は累計でBNBの約4分の1 |
| 100か国以上・400万店舗でPayPIN | 2024年の提案 | 加盟店リストや決済データの公開なし |
| 「14 Millions+ Active Accounts」 | iost.ioトップページ | 公式エクスプローラーのL1アカウントは累計約126万 |
| 独自ステーブルコイン(PB-USD、DUSD) | RWAの設計ドキュメント | 設計ページのみ。デプロイ済みコントラクトは見当たらず |
| L2のガス代0.001ドル、5,000 TPS超 | L2のドキュメント | ガス代は確かに極小。ただし処理能力を試す取引がない |
出典:IOSTの提案投稿、iost.io、docs.iost.io、IOSTSCAN、当サイトによるL2のRPCサンプリング。
約束を発表するのは簡単
債券やファンドをトークン化するには、規制を受けたパートナー、法的な枠組み、そして実際にトークンを買う投資家が必要です。それがエクスプローラー上に現れるまでは、RWAの見出しは「普及」ではなく「計画」として受け止めましょう。
L1保有者がすべきこと(結論:何もしなくてOK)
すでにIOSTを持っているなら、強制されることは何もありません。元のチェーン上のコインはそのまま有効で、チェーンはブロックを作り続けており、CoincheckなどはIOSTの入出金ネットワークとしてIOSTメインネットだけを案内しています。IOSTステーキングのガイドで説明しているノードへの投票も、これまでどおり続けられます。
対応が必要になるかもしれないのはエアドロップです。3.0のエアドロップでは、L1ウォレットの保有者向けに8億5,280万IOST、取引所経由の保有者向けにさらに8億5,280万IOSTが用意され、いずれも2025年3月15日のスナップショットと最低1,000 IOSTの条件に基づいています。Coincheck、BitTrade、Upbitなどの取引所で保有していた場合は、取引所が回ごとに付与してくれるので何もする必要はありません。自分のL1ウォレットで保有していた場合は、iost.io/airdropでL1ウォレットを接続して請求し、BNBチェーンのウォレットでBEP-20版IOSTを受け取ります。支払いは48か月かけて、毎月9日に行われます。スナップショットのあとに買った分は対象外です。
L1のIOSTをBEP-20版に変換するかどうかは任意です。StakeDropに参加したい、あるいはBNBチェーンのウォレットやDEXを使いたいなら意味があります。L1ネットワークにしか対応していない取引所で売買するだけなら、ほとんど意味はありません。公式ブリッジは一方通行なので、大きな金額を動かす前によく考えて決めましょう。
最後に、「3.0移行」をうたうものには警戒してください。本物の手続きで、秘密鍵やシードフレーズの入力、見知らぬサイトでのトークン承認を求められたことは一度もありません。各取引所の対応状況はIOST取扱い取引所のページで、L1のアカウントや取引はIOSTエクスプローラーで確認できます。公式リンクの一覧はIOSTのセキュリティページにあり、公式サイトからリンクされているからといって第三者のサービスが公式になるわけではない、という注意も書かれています。
よくある質問
IOST 3.0とは何ですか?
IOST 3.0は、2025年に行われたIOSTプロジェクトの再出発です。BNBスマートチェーンに決済を委ねるOP StackのLayer 2(チェーンID 182)を追加し、BNBチェーン上のBEP-20トークンをIOSTの主な取引対象にし、ノード報酬、エアドロップ、助成金、チーム向けに約213.2億枚の新しいIOSTを発行しました。元のIOSTメインネットも並行して動き続けています。
IOSTの公式BEP-20コントラクトアドレスは?
BNBスマートチェーン上の公式IOSTトークンは0xAf48B7e315a52518CfBF7d96C455D9dFAD94cB48で、小数点以下18桁、2025年3月8日にデプロイされました。IOSTのドキュメントはこれをBNBチェーン上で唯一の公式IOSTトークンコントラクトとしています。IOSTを名乗るほかのBEP-20トークンは偽物と考えてください。
IOSTはERC-20トークンですか?
現在は実質的に違います。IOSTは2018年にイーサリアム上のERC-20トークン(0xFA1a856Cfa3409CFa145Fa4e20Eb270dF3EB21ab)として始まり、2019年2月のメインネット稼働後に保有者はネイティブコインへ交換しました。いま重要なのは、ネイティブのL1コインとBNBチェーン上のBEP-20トークンの2つです。
IOSTをLayer 2へ移行する必要はありますか?
必要ありません。強制的な移行はなく、L1チェーンは今も0.5秒ごとにブロックを生成しています。iBridgeでL1のIOSTをBEP-20へ変換するのは任意で、対象となるL1保有者には交換の義務ではなくエアドロップが配られました。移行が必要だと言って秘密鍵を求めるサイトは詐欺です。
IOSTのLayer 2をMetaMaskに追加するには?
カスタムネットワークとして、ネットワーク名IOST Mainnet、RPC https://l2-mainnet.iost.io、チェーンID 182、通貨記号BNB、エクスプローラー https://l2-scan.iost.io を追加します。ガス代としてL2上にBNBが必要で、公式のL2ブリッジで移します。ブリッジはBNBにしか対応していないため、現時点ではIOSTをL2へ送ることはできません。
BEP-20版IOSTをIOSTメインネットに戻すブリッジはありますか?
私たちの調査時点では、iBridgeでは戻せません。iostbridge.comはL1のIOSTをBEP-20版に変換する一方通行のブリッジで、1回あたり最低1万、最大100万IOSTです。ページには、BSCからIOSTへの方向は近日対応予定と書かれています。
出典・参考資料
- IOSTドキュメント — IOST Layer 2への接続(ネットワーク情報とトークンコントラクト) · 公式ドキュメント
- IOSTドキュメント — IOST 3.0 正式ローンチ · 公式発表、2025年3月8日
- IOSTドキュメント — 新規発行の経済モデル · 公式ドキュメント
- IOSTドキュメント — エアドロップのルール · 公式ドキュメント
- iBridge(L1からBNBチェーンへ) · 公式ブリッジ
- GitHubのopIOSTリポジトリ · 公式コード
- IOST 3.0: Transforming into a specialized BNB Chain Layer 2 · 公式ブログ、2024年12月12日
- Cointelegraph — UpbitがLayer 2移行を理由にIOSTを注意喚起 · 報道、2025年1月13日
